「……なに?」
まだ寝ぼけているのか、目をこすりながらあたしのほうをみてきいてくる。
(前!まーえ)
口パクでそう言うと、大空は教卓のほうへ顔をむけた。
「大空ーっ!」
「げっ」
露骨に嫌な顔をする。
「おまえ、いいかげん教卓の前の席にすんぞ!」
「大空くん、おもしろすぎーっ」
「大空とあおのんのコンビ、マジ最高ー!」
大空とあおのんのいつものやりとりに、クラスのみんなはまた笑いだす。
みんなにつられて、あたしも笑う。
自由人でかっこいい大空は、クラスでにんきもの。
「大空。罰として放課後、準備室の掃除してもらうからな!おぼえておけよ!」
「マジで蒼野ふざけんな……」
「ぜんっぜんふざけてねぇからな。それにおまえいま、蒼野って言ったな!俺、いちおう先生だからな?みんなみたいに、あおのんとよべ!あおのんと!」
あおのんのことばを無視して、マジさいあく、と横でつぶやく大空をほおづえをつきながらみていると、バチッと目があった。
すると大空は、あたしにむかってニヤッと不気味な笑みをみせた。
え、なに。
嫌な予感……。