ちょっとからかっただけなのに拗ねて無視する玲汰先生に、あたしの気持ちも自然と落ち着く。



 怒っているのかなと不安になり玲汰先生の顔を覗くが、玲汰先生の表情からは感情が読み取れなかった。

 そういえば、玲汰先生ってそういう人だったな。


 やっぱりからかいすぎちゃったかな……。

 少しずつ不安になっていくあたし。




「ね、ねえ」


「…………。」


「怒ってる?」


「…………。」


「うぅ……」


 黙ったままの玲汰先生に、あたしも諦めて黙り込んだ。



 また、涙腺が緩む。

 でも、今度は違う理由で。


 何も言ってくれないと不安になっちゃうじゃんか。

 なんて拗ねてみるけど、こうなったのもあたしのせい。


 そう思うと罪悪感が生まれてきて。

 嫌われてしまっていないか、不安になってきてしまって。


 どうしよう……。










 それから一言も喋らずに、時が過ぎていった。

 ご飯も食べ終わり、お風呂にも入って。


 12時もとっくのとうに過ぎてしまった。




 そして今。隣で座っている玲汰先生をじっと見つめている。


 怖いけど、このままは嫌だ……。

 そう思ったあたしは、勇気を出して声を掛ける。



「……そ、そんなに怒らなくてもいいじゃんか。」


「…………。」


「ちょっと、喋ってよ」


「俺は、必要最低限のことしか喋らないから」