味見してないけど、美味しく出来ているかな……。


 あたしが少し緊張しながら豚の生姜焼きに手を伸ばした時、玲汰先生がテレビの電源を消した。


 突然のその行動に驚いて、あたしは玲汰先生の顔を見る。

 すると、玲汰先生の瞳はもうあたしのことを捉えていた。


 その瞳にあたしは吸い込まれるように釘付けになる。




「今日、どうだった?」


「えっ……?」


 玲汰先生がそんなあたしに放ったのは、思いがけないセリフ。


 不思議に思って短い瞬きを何回もしていると、

「今日、河野と話して来たんだろ?どうだった?」

 玲汰先生は落ち着いた口調でそう言った。



 話の意図を掴んだあたしも、箸を置いて、今日のことを話し出す。


「ああ……うん。ちゃんと、仲直り出来たよ」


「そうか。良かったな」


「うん……噂の犯人は、美和だった。だけどその理由は、あたしのせいでもあったの。だからお互い謝って、仲直りしたよ。それでその後、カフェで全て話した。夏希のことも、玲汰先生とのことも」


「うん」


「あの……だから、美和はあたし達のこと全部知ってる。だけど、誰にも言わないって言ってくれたから。その……」


「分かってる。心配するなってことだろう?」



 玲汰先生はそう言って優しく微笑んだ。

 だからあたしも、安心して頷いた。