「ねえ、ちょっと話、いいかな?」


 あたしは隣に座っている玲汰先生と向き合う形になり、そう言った。



 そう、あたしは玲汰先生に言いたいことがあるから来たんだ。


 今、一番言いたいこと。

 まだ言いたいことがまとまっていないけれど。


「えっ?ああ、うん」


 玲汰先生の返事を聞いて、あたしはすぅっと息を吸う。



「いきなり来ちゃってごめんね。ただ、話したいことがあったの」


「うん」


「あたし、ね……両親と話し合ってきた」


「えっ……」


 あたしのその言葉に、玲汰先生は驚いたような反応を示した。

 そりゃそうだろう。


 でもね、大丈夫だったよ。

 あたし、乗り越えたよ。



「……両親に嫌われてるんじゃないかって思ってた。でも、違ったの。二人はあたしのこと、嫌ってなかった。あたしを責めていなかった。逆に、いつも心配してくれていた。それが、話し合った結果」


「……良かったじゃん」


 玲汰先生はあたしの話を聞くと、優しく微笑んでくれた。


 ……これだ。

 これが、あたしの心を揺らす笑顔だ。