「……いつも、後悔していた。どうしたらいいのか分からなくて、何度も千夏に強く当たっていたから。千夏、悲しかったよね。ごめんね……」


 お母さんの目から、涙が零れ落ちた。

 お父さんの瞳も潤んでいる。



「うう、ん……」


 あたしも気づけば、涙を流していた。


 あたしが勇気を出して聞いた答えは、予想をしていたものとは大きく違っていた。


 だけど、聞いてよかった。

 勇気を出して、よかった。



「だけど、信じて。あたし達は……千夏のことを愛してるわ。それは昔から、何も変わってない。……辛い思いをいっぱいさせたことは、本当に悪かったと思ってる。だけど、貴方を嫌いになったことは、一度もないから」


 お母さんはそう言って、あたしの頭を撫でた。

 あたしの目から、もっともっと涙が溢れ出ていく。





 この世界に、中々大きな奇跡は起こってくれない。

 だけど、自分が少し勇気を出すだけで、小さな奇跡は起こるものなんだろう。


 誰かに自分を変えてもらうことはできない。

 だけど、自分が変わろうとすれば、いつだって変えられるんだ。



 そうだ。

 無理なことなんてない。

 諦めなきゃいけないことなんてないんだ。



 泣き続けながら、ずっとそんなことを思っていた。




 いつぶりだろう。

 嬉し涙が出たのは。