「……久しぶりだな、こうやって家族が集まって食事をするのは」


 少しして、お父さんがそう言った。

 いつ話そうかとタイミングを窺っていたあたしには、良いチャンスだ。




「……そうね」

 お母さんもお父さんの話に乗る。


 二人を見ずに、あたしはカレーを食べ続けた。

 どうしよう、このままじゃ食事が終わっちゃう。



 そう思いながらふと二人の皿を見ると、そこにはカレーは入っていなかった。

 いや、食べた〝跡〟だけなら残っていた。



 あたしはそれを見て、ハッと気づく。

 食べ終わっているのに、二人とも全く席を立とうとしない。


 もしかしたら二人は、このままでいたいと思ってるんじゃないのか。

 三人で食卓を囲んでいる、今のままでいたいって。



 ……なんだ。

 恐れることなんて、一つもないんだ。


 ほっと安心したあたしは、リビングに入る前にポケットに入れた鍵を出して、テーブルに置いた。




「……なんなの?それ」


 お母さんはその鍵を見るなり、そう不思議そうにあたしに聞いてきた。



「ああ……大事なもの、かな」


「そう……」