また低い声がした。


え…?


邪魔?


言ってることの意味を理解できなくて、私は首を傾げる。


「ずっとこっちを見てたから退いて欲しいのかと思ったんだけど…」


逆に男の人が首を傾げて言った。


やっとその意味を理解した私は、慌てて首を横に振る。


「邪魔だなんてとんでもないです!なんて言うか…髪の色が珍しかったから…」


最後の方は少し口ごもる形になった。


本当はそれだけじゃないけど、決して嘘をついてるわけでもない。


男の人は


「ああ、これね」


と、親指と人差し指でそのオレンジ色に近い髪の毛を摘まんで見せた。


「わりと目立つからね、この色」


そう言って柔らかく笑う顔に、胸が締め付けられそうになる。


「さっきのことなら気にしなくていいから。でも今度からは気を付けなよ?知らない人を凝視するのは相手に失礼だから。今回は俺だったから良かったけど」


男の人はまた笑う。


それから「じゃあね」って言って行ってしまった。


その背中を私はまた見つめる。


結局、なにも聞くことは出来なかった。


それでも、話せただけでも大きな収穫だよね!