黒縁の眼鏡の奥に見えた瞳が、私の中にハッキリと残ってる。
ほんの一瞬目が合っただけでこんな…。
一目惚れなんて信じてなかった。
自分はそんなのしないって思ってた。
今の気持ちを言葉で表すのは難しい。
でも苦しい。
私は知らなかったんだ。
人はこんなにも簡単に恋に落ちることが出来るってことを。
男の人がレジに向かって歩いて行くのが見える。
私はただその背中を見つめて、何も買わずにお店を出た。
男の人よりも先に。
外の風はまだ少し涼しい。
私の性格は厄介で、妙なところで行動力があるって友達からよく言われる。
だから外で待ち伏せすることにした。
それで凝視していたことを謝ろうって口実で、キッカケを作る作戦。
普通に考えれば単純かもしれないけど、私には考えてる余裕なんてない。
凝視していたことは悪いっていうか、失礼なことだってわかってるよ。
でも、どうしても話してみたいんだもん。
いきなり声掛けられたら迷惑かな?
なんて思ってたら男の人が出てきた。
どう見ても相手は年上。
今さら緊張してきた。
もうこの際当たって砕けろ精神だ!