ここの本屋さんの小説棚は身長が低い私でもかろうじて向こう側が見える高さ。


とりあえず気になった本を一冊ずつ手にとってみる。


何冊か見たあと、何げなく隣を見た。


黒いスーツを着た男の人が本棚とにらめっこしてる。


知らない人を凝視するのはよくないことだと思うけど、目が逸らせない。


だってかっこいいんだもん…。


今は横顔しか見えないけど、睫毛が長いのがわかる。


オレンジ色に近い髪は耳にかかるくらい。


身長は屈んでる状態で私と同じくらいの高さだから、ちゃんと立てば私なんて追い付けない。


こんな彼氏欲しいな…。


私があまりに見つめ過ぎていたせいか、男の人は顔を上げてこっちを見る。


その瞬間、男の人と目が合った。


心臓がドキっていった気がした。


私の頬は熱を帯びる。


男の人はすぐに視線を逸らしてどこかへ行ってしまった。


でも私は動けない。


さっきからドキドキと鳴り止まない心臓。


もしかしたら目が合ったなんて気のせいかもしれないのに。


深呼吸して必死に自分を落ち着かせようとした。


これは恋って言うの？


これが一目惚れ？