覚えててくれたんだって思ったら嬉しくなった。


「偶然だね。この近くなの?」


「いえ、違うんですけど…たまにこっちにも来るんです」


「そうなんだ~」


話を振ってくれるから普通に話せる。


今日会えてよかった。


でも名前知りたいな…。


いつまでも男の人ってわけにはいかないもんね。


「ねぇ、名前教えてよ」


「うえっ?!」


聞こうと思ったことを先に聞かれて、驚きのあまり変な声を出してしまった。


男の人はビックリした顔してたけど、すぐに笑い顔を見せる。


「君面白いね。名前聞いただけなのにそんなに驚かなくても」


って口元を右手で隠しながら笑う。


「私も聞こうと思ってたのに、先に聞かれちゃったからですよ」


恥ずかしくなりながらも言い返してやった。


男の人は笑いが治まってきたきたみたいで


「ごめんごめん」


と謝ってくる。


「別にいいですよ。私、高梨花って言います。“はる”は草花の“花”で“はる”って読みます」


ドキドキするのを抑えて言った。


「いい名前だね」


男の人の言葉に、私の心臓はドクンと大きな音をさせる。