運転してる人が大槻先生じゃないってわかれば諦めもつくんだけどな…。


隣の車を見ながら、凝視するのは失礼っていう男の人の言葉を思い出してた。


信号が青に変わって、車が動き出す。


私が視線を逸らす直前、隣の車の運転手さんが手を振ってきた。


顔はハッキリ確認出来たわけじゃない。


でもたぶんあれは大槻先生だって思った。


私も振り返そうとしたけど、シルバーの車は左折していく。


お母さんの運転する車は真っ直ぐに走り続け、結局手を振り返すことは出来なかった。


残念な気持ちだけが残ってる。


それでも、学校で会ったら聞いてみようかなって思えた。


先生には学校でも会えるんだし。


本屋さんの男の人に比べたら、先生の方が確率が高いもん。


私はまたケータイで音楽を流しながら、本屋さんに到着するのを待った。


さすがに休日の夕方の道路は混んでいて、何度か信号で止まった。


弱まるどころか強さを増して、雨は相変わらず降り続いてる。


ゆっくりと駐車場に入って、車を停める場所を探す。


「今日も混んでるね」


「先に中に行ってなさい。お母さん停められるところ探してるから」