「送ってくよ。今の時季は暗くなるの早いし危ないからね」
大槻先生はそう言うと、私たちのプリントを準備室のおじいちゃん先生に渡して、グレーの上着の内ポケットから車の鍵を取り出す。
「こっから見えるあのシルバーのが俺の車だから先に乗ってて」
車の鍵を手渡されて、私たちは顔を見合わせる。
先生は職員室に用があるってことで先に教室を出ていった。
とりあえず、準備室にいる先生方に挨拶して私たちも教室を出る。
玄関に向かいながら
「本当にいいのかな?」
ってずっと言ってた。
先生から預かった鍵を大事に握り締めて、玄関で靴を履き替える。
緊張しながらも大槻先生の車のところまで行き、ロックを解除して後ろのドアを開ける。
私が先に乗り込んで、亜美子が乗ってからドアを閉める。
車の中は微かに煙草の匂いがした。
でも煙草だったらお父さんだって吸ってるし、別に嫌じゃない。
あの化学教室の臭いに比べたらずっとマシだよ。
静かな車内にいきなり着うたが流れる。
私たちはビックリして、自分たちのケータイを開いた。
でも私たちのじゃなかった。