私はこの臭いが嫌いだ。
思わず鼻を摘まんでしまう。
「どうした高梨。臭いが駄目か?まだまだだな」
なんておじいちゃん先生は笑ってる。
笑い事じゃないってば!
本当に気持ち悪いのに…。
化学教室の机は実験用が多いから、大きな長方形になってる。
それが水道を挟んで2つずつくっついてて、教室の中に9つある。
椅子は美術室にあるような木でできた四角いもので、私たちは窓側の席に座らされた。
二枚ずつ配布されたプリントに名前を記入する。
まるでテストみたい。
書き終わって教室の入り口の方を見ると人影が見えた。
それからすぐにコンコンとノックするのがきこえて、スーツを着た男の先生が教室に入ってくる。
「お待たせしてすいません、溝口先生」
「いやいや、こちらこそ急にすいませんね。喜べお前たち。お前たちの為に若い先生呼んでやったぞ。わからないところは大槻先生に聞きなさい」
おじいちゃん先生は大槻先生に「後は任せた」と笑いながら準備室に入っていく。
それを私たちはただ見送った。
「よろしくね」
大槻先生が顔を覗き込みながら言う。