ひながチラッと横にいる亮介の顔を伺うと、優しそうに、でも少し寂しそうに笑って名前が彫られていく柱を見つめている。
「亮介は、一番じゃなくて良かったの?」
不意にそう聞いてしまったのは、いつもこの8人で何かをする時、最初は亮介が…という事が多かったからだとひな自信も気付いているのだろう。
本当は亮介は最初が良かったんじゃないかな?
そんな考えがひなの頭を過ったのだ。
が、予想と違って、
「ん?ああ、別に。ひなは?」
全く順番なんて気にしていない様子を見せる。
「私も別にどこでも良いかな」
「だな。まあ、強いて言えば、ひなの次が良いかな」
「何で?」
唐突な亮介の発言にひなが首を傾げる。
が、亮介はひなに向かって意地悪にニヤッと笑った後、
「何となく」
適当にそう言葉を紡ぐだけ。
「何それ!」
「うっせぇ!何となくだよ」
自分の欲しい答えが得られずぷうっと頬を膨らませるひなと、それをシシッと笑って受け流す亮介。
こんなやり取りをずっとしていたい。
そうひなが思ってしまうのも仕方ない位、温かい空気が二人の間に流れている。
ぽおっと頬が火照り出す。
そんなひなの頬の火照りを元に戻したのは、夢の声だ。
「亮介君、次彫ります?」
亮介へのその問い掛けに、思わずひなの胸がズキッと痛んだ。