ひなはといえば、柱の前まで来るとそこにしゃがみ込んで柱を指差して卓へと顔を向ける。



「ここなんてどう?」


「良いんじゃない」



卓のそのぶっきらぼうな発言は肯定を指す。


ここにいる皆はそんな事承知済みだ。



「よしっ!じゃあ一番は俺!」


「俺だろ!」



手を挙げてひなの方へとやって来る勝也の後を太一が追っかける。


早い者勝ちになったのだろう。


ひなの手から先に彫刻刀を取ったのは勝也で。勝也が一番上に、その次が太一という順番に決定した。


真剣な顔をして柱の前にしゃがみ込んで自分の名前を彫る勝也。


徐々に彫られる勝也の名前はどうやらフルネームをカタカナで彫っているらしい。



「出来た!はいっ、太一!」



勝也の手から彫刻刀が太一へと渡る。



「ちぇっ。俺が一番が良かったのにさ」


「残念だったなー」


「うっせぇ!」



太一は相当一番上に名前を彫りたかったらしい。


グチグチと文句が止まらない。


ただ、この愚痴が止まらないのは、へらへらと笑って太一を馬鹿にする勝也にも問題があるのだろうが。



「次、私!」



太一が自分の名前を彫っていると、梓がそう声をあげて太一の側へと駆け寄って行く。


それに続くように歩き出した夢。


そんな二人の事を見ながら、ひなは近くの机へと腰を下ろす。


と、同時にひなの隣へとやって来た亮介。