ある時だった。 あたしが小学校を卒業する間際のこと。 「お母さん!あたしの生まれた時のエピソードを紙に書いてー!」 あたしは大好きな母親のもとに駆けつけ、紙とペンを差し出した。 卒業文集に生まれたときのエピソードを載せるらしい。 あたしはそれを頼みにきた。それだけだったんだ。 なのに 「…なにそれ」 え? いつも優しいお母さんからは考えられないような低い声。 不安が心をよぎる。