そう言うと、杏奈のワンピースを荒々しい手つきで捲った。


 ──嫌……!


 反射的に身を竦めた瞬間、左の太ももに鋭い痛みが走った。


 ナイフで切りつけられたのだと分かると、杏奈は無駄な抵抗を諦めた。


 目をつむりながら、嵐が過ぎ去るのをじっと待つ。



「つっ……、あぁっ!」


 ふいに襲いかかってきた下腹部の圧迫感に、杏奈は意図せず声を漏らした。


 それには構わず、芹沢が奥へと入ってくる。


 長い髪に隠れて、表情までは見えない。



「うっ……いッ、やぁああ!」


 両手で顔を覆って叫ぶ杏奈。


 痛みよりも、恐怖と嫌悪感が全身を支配していた。


 もし、これが悠介だったら……


 こんなに手荒な真似はしないだろうな。


 そう思うだけで、悠介のことが恋しくなった。


 枯れたはずの涙が、再び溢れ出してくる。



「ふっ……ぅえ……っ」


「……泣くな。フランケンシュタインになりたいのか?」


 真がナイフを構えながら低く言い放つ。


 しかし、杏奈は自分の感情を制御できず泣き続けた。



「……っ、ハァ……ッ」


 真は眉間に皺を刻み、苛立ちを込めたようなため息を零した。


 そして──



「覚悟しろ」


 低く放たれた言葉に、杏奈は怯えたように目を見開く。


 思わず顔を背けたが、ナイフを向けられることはなかった。


 その代わり、芹沢は杏奈を犯し続けた。


 何度も、何度も──獰猛な肉食獣のように牙を剥きながら。


 これほど苦痛で、絶望的な状況は他にない。


 好きでもない男に犯され、この上ない屈辱を味わった。


 ……殺してやる!!


 杏奈は憎悪に燃えた目を見開き、快楽の渦中にいるであろう彼を注意深く観察した。


 右手に握られたナイフから、血が滴り落ちた瞬間──



「うぁあああッ……!」


 杏奈は叫びながら、芹沢真の手からナイフをもぎ取ろうとした。


 奴の心臓に突き立てる為に。