「黒うさぎ様…」

エレナさんが、心配そうな顔をして言った。


「大丈夫、大丈夫!ジュノ、おいで!」


ジェームスさんが、パチンと指を鳴らすと、店の隅から、一匹のクロネコが歩いて来た。そして、軽やかに、ジェームスさんの膝の上に飛び乗った。


「この子がジュノだよ。可愛いでしょ?」


ジェームスさんが、ジュノの背中を撫でると、ジュノは喉をゴロゴロならした。


「可愛い~!」


ピンと立った耳。
綺麗なブルーの目。
長く、切り揃えられた爪。
そして、何より。
黒く艶やかで美しい毛。
それは、全てを飲み込む、ブラックホールのようだった。