黒うさぎからの招待状

―「2丁目の図書館って、ここか?」


アタシと賢也は、この辺では、大きめの図書館の前に居た。
2丁目は、とにかく、静かで、活力が無い事で有名。無人丁と呼ぶのに、1番相応しいんじゃないか思うくらいだ。


「入ろっか」

「そうだな」

―キィ…。

図書館の引き戸の音が不気味に響いた。
「いらっしゃーい♪」

「いらっしゃいませ」


アタシ達が入るとすぐに、ジェームスさんとエレナさんの声がした。


「そろそろ来る頃だと思ってたよ。さあ、こっちにおいで」


ジェームスさんは、ひょいひょいと店の奥で手招きをした。
アタシは、『そろそろ来る頃だと思ってた』の意味が分からなかったけど、とりあえず奥へ行った。賢也もアタシに続いた。
「エレナ!店番頼むよ」


ジェームスさんは、エレナさんにそう言って、アタシ達より少し遅れて入って来た。
店の奥には、少し大きめの丸いテーブルと、三脚の椅子があった。
テーブルの上には、紅茶とお菓子が入った皿と、それぞれの名前が書かれた紙が並んでいた。


「…さてと。じゃあ座って!」


アタシは『珠璃』と書いてある席に、賢也は『賢也』と書いてある席に座った。
「珠璃は、紅茶が嫌いで、ココアが好き。だから、ココアにしといたよ。それから、賢也は、レモンティーね♪」


アタシと賢也は、口をポカンと開けていた。何故なら、全て合っていたから。


「あのっ…!」


アタシは耐え切れなくなって、ジェームスさんに聞いた。


「どうして、分かったんですか…?アタシが、紅茶嫌いで、ココアは好きだって…」

「俺も!何でレモンティーって…。俺、ジェームスさんにそんな事言った覚え無いんすけど…?」

賢也もアタシと同じ思いだった。
「う~ん…。何故かって聞かれると、困るんだけど…」


ジェームスさんは苦笑した。


「とりあえず、分かるんだ。君達の事はもう殆ど知ってるしね」

『答えになって無いんですけど…』


アタシが一人、心の中で愚痴ってると、ジェームスさんが口を開いた。


「答えになってないって?まあ、その内解るよ」


ジェームスさんはニコリと笑った。
「で?今日は何をしに?魔法堂の商品買いたくなった?今なら安くしとくよ~♪えっとね、あの水晶なんか、本当は1万円するんだけど、今なら半額の五千え…!」

「違います」


ジェームスさんがペラペラ喋ってる途中で、アタシはきっぱりと言った。


「分かってるって。パーティーの事を聞きに来たんでしょ」

「…はい」


アタシは冷静に答えた。


「パーティーって、何をするんですか?」

「う~ん…。本当は、手紙で教えようと思ってたんだけどね。せっかく聞きに来たんだから教えよう」

「…お願いします」


アタシはジェームスさんを見つめた。
「パーティーは簡単に言うと、魔法堂主催のゲームみたいなものなんだ。そのゲームに勝った人は、賞金100万円と、この魔法堂の権利書が与えられる」

「ゲホッ!ひ…、ひゃくまんえん!?権利書!?マジですか!?」


レモンティーを飲んでいた賢也が吐き出した。


「賢也…」

「ゴメン、ゴメン!」

「あははっ!大丈夫?」


ジェームスさんが笑いながら、ティッシュを差し出した。


「ありがとうございます…。すんません…」


賢也は、顔を真っ赤にしながら、ティッシュを受け取った。
「ごめんなさい。続き、お願いします。」

「うん。権利書は、その人の自由に出来る。店を売っても構わないし、勿論、優勝者がオーナーになってこの店を継ぐ事も出来る」

「その、『ゲーム』って何するんですか?」

「ゲームはね…。言わば、一種の奪い合い、みたいなものだよ君達には、まだ早いかもしれないけどね」

「奪い合い…?」

「うん。今君達が着けてる、そのブレスレットあるでしょ?それを奪い合うの」

「これを…?」


アタシは自分のブレスレットを見た。
「あの…?」


レモンティーを吹き出してからは静かにしていた賢也が口を開いた。


「何?」

「俺のブレスレットと、珠璃のブレスレット、微妙に違うんすけど?」

「うん。だって、特注品だもん。各自、自分の名前と、自分の誕生石が埋め込まれてるから」

「本当だ…!」

「珠璃と賢也の貸して?」


アタシはブレスレットを外し、ジェームスさんにそれを渡した。


「ほら。珠璃の方には、Jyuri Fujiwaraの文字と、アクアマリン。で、賢也の方は、Kenya Watanabeと、アメジスト。ね?」

「ちょっと待って!」

「ん?」

「これ、すっごいキラキラしてるんですけど…?もしかして、これって…?」

「本物だよ」


ジェームスさんは、さらっと言った。