『可愛い。』





賢也の言った言葉が頭の中を何回も何回もループした。
「普通あんな事言わないでしょ…!」
言ってから、ハッ、と口を塞いだ。賢也に聞かれていたらどうしよう。でもその心配はなかった。賢也は既に寝息をたてながら寝ていた。
「なんだ、寝てるんだ。」
「何だよ…。」
「えっ?!」
「…。」
「寝…言…?」
アタシはその状況にピッタリすぎる賢也の寝言に呆気にとられていた。
「…アタシも寝よう。」
まだ重たくならない瞼を無理矢理閉じて、寝ようとした。すると、すぐに深い眠りに落ちて行った―。と言いたかったが、実際、そう簡単にはいかない訳で。
「寝れないなぁ…。」
アタシはふと、窓の方に目をやった。
「…綺麗。」
真っ暗闇の中、少し黄色く、でもはっきりと浮かんでる月は、この世で1番綺麗なんじゃないかと思うくらいに輝いていた。