『珠璃…、あなたは本当に優しい子なのね…。』
「いえ、そんな…。」
「おい、珠璃…。誰と話してんだよ…?」
賢也が眉間にシワを寄せながら言った。
「誰って?千尋さん。声、聞こえるでしょ。」
賢也の眉間のシワがいっそう深くなった。
『珠璃、しょうがないわ。私の声は、あなたにしか届かないもの。』
「どういう意味ですか?」
『何も聞いてないの?』
「え?」
『あなた、並外れた霊感を持っているのよ?』
「うそ…!」
『本当よ。夢、見たでしょう?それも霊感のせいなの。今のあなたなら、私と心の中で会話出来るはずよ。あなたがさっき座った椅子に座って静かに目を閉じて。そして心の中で私の名前を呼んでみなさい。』
アタシは言われた通り、椅子に座って、静かに目を閉じた。するとその瞬間、意識が飛んだようになった。
『…蜜柑…。』
アタシは意識の心配をしながらも、あえて、千尋さん、とは言わずに、蜜柑、と言った。
『今【蜜柑】って言ったでしょ。』
『っ!!』
『ね?会話できるでしょ。本当に会話出来るのか試したのね。おもしろい。』
『…アタシに何の用ですか?アタシに何か言わないといけない事があるんですか?』
『そうね…。あると言えばあるわ。私を撃った人の事。』