「~っ、だから泣くなよッ!!」


周りの目が気になって、服の袖で涙を拭いてやった。


「泣いてないわよ!!」

「たく、素直じゃねぇーなー」


だからこそ、悲しみから守りたくなる。


「あ、そろそろ飛行機が出発するわ…」

「…そっか」


またしばらくは離れ離れか…、


「蓮!」

「ん?」

「朱祢ちゃん、幸せにしてやれよ!」


子供みたいな笑みで、俺の胸に拳を押し付けた。


「ったりめぇーだろ。
やっと捕まえたんだから!」

「ふふ」


梢さんは拳を離し、俺から体を少し離した。


「またね」

「親父によろしくな」

「今度は二人で遊びに来るから!」


キャリーケースを持って、梢さんは手を振って、搭乗口に向かって行ってしまった。


「…またな」


梢さんの小さな背中を見送って、俺は背中を向けて反対方向に歩き出した。