梢さんから目を逸らして頭をかいた。
「…ごめんね」
「え」
先に謝ったのは頑固な梢さんだった。
「私のワガママで迷惑かけて」
「別に…」
短く返事をして、梢さんの表情を伺うと泣きそうな顔をしていた。
「ごめんね、小さい頃から迷惑かけて…。
父親がいない家庭に産まれてきた蓮を、少しでも幸せにしたかったのに、私が弱いせいで蓮が友達から虐めにあって。」
初めて梢さんが泣いた姿を見た。
ずっと、ずっと、
辛い思いをして生きてたんだ…。
「幸せだよ」
「蓮…」
自分でもよくわからないけど、勝手に口が動いてた。
「確かに父親の事で虐めにあって、一時期梢さんを恨んだりした事もあった。」
「……」
何を言いたいのかよくわからないけど。
「でも、《お母さんがいれば幸せだ》って気づいた」
父親がいなくっても、梢さんと一緒にいて幸せだったから…。