「やだ…、雨じゃない」
急に降ってきた雨にどうする事も出来ず
梢は立ち尽くした。
長い髪が雨に濡れて、顔に張り付く。
服も水分を吸って重たい。
「クシュンッ」
体が冷たく、寒い。
きっと、蓮の家に帰っても追い出される
あんな酷い事言った私を憎んでるに違いないから…
―…
一本の傘をさして、手にはお母さん用の傘。
雨で視界も悪く、人を探すのに困難だった。
『!』
ある一点で、私は足を止めた。
黒い人影、いや…、服?
間違いない、あれはお母さんだ!!
『お母さん!!』
私は駆け足でお母さんの下に駆け寄った。
「あなたは…!」
『探しましたよ』
手に持っていた傘を、濡れているお母さんに渡そうと前に差し出した。