暫くして蓮の部屋に二人で戻ると
お母さんの姿はどこにも無かった。
『煙草…』
リビングには、灰皿の上に一本の煙草の吸い殻が残っていた。
「たく、自分勝手な奴」
小さな声で蓮が漏らした時、外から小さな音が聞こえた。
窓に近寄ってようやく分かった。
『雨』
小さな音は段々と激しい音へと増していった。
『私、お母さん探してくる!!』
「行くなッ!」
リビングを出る瞬間、怒鳴られて体が止まった。
「あんな奴、ほっとけよ…っ」
確かに、一般的に見たら私が追いかける理由も無い。
『でも、ほっとけないよ!』
私は蓮をリビングに一人残して、部屋から出て行った。
玄関の隅にある傘立てから適当に二本借りて外に出た。
『…』
マンションの廊下から見た雨は、凄まじい唸り声と地面に叩きつける音を出して、外を歩く人の行くてを邪魔していた。