私以外いなかった屋上に浅田くんが手を上げて入ってきた。
『どうしたの?』
「何となく、風に当たりたくって…」
そう言うと私の隣に並び、柵に腕を置いて寄りかかった。
「俺、茅原に一番に話したい事があるんだ」
『?』
「言ったよな、゛恋の相談にのる゛って」
浅田くんの言ったことを聞いて思い出した。
蓮の事で屋上で相談したときに、私、そんな事言ってたな…
「俺の恋愛相談のってくんね?」
眉毛を下げて切なく笑う浅田くんを見て、私は勿論頷いた。
「あれは、俺が中2の時…」
―…2年前の冬
「静香(シズカ)!置いてくぞ!」
「うわーん!!待ってよ!!」
毎朝の日課。
隣に住んでる幼なじみ
…水瀬 静香
を学校までチャリで送り届ける事。
学校は別々だけど、静香の学校は通り道だからついでにと送っていた。
「お待たせー」
「早く後ろ乗れ!」
後ろに静香が乗ったのを確認して、俺はペダルをこいだ。
「淳、早すぎ~」
「こっちは遅刻ギリギリなんだよ!!」
後ろから静香の笑い声が聞こえた。
…俺は小さい頃から静香が好きだ。
でも、幼なじの壁を乗り越える勇気がなかった。