その部屋は9号室よりははるかに広く、天井も高かった。

中央には何個かの大きな丸石でできた暖炉があり、その左右には長い窓があった。

扉側の壁には、机と本棚があり、その中には日本語の絵本や、昔から人に親しまれている小説などがおいてあった。

部屋の左側には電子レンジがあり、左右の壁にはそれぞれオリーブ色のソファーがあった。

扉側の壁の上部をよく見ると、木でできた看板がかかっていた。

『HANSSEY LIBRARY』

「ハンシ−ライブラリー?」

本があるのはその理由か。とヒカリは納得する。

ここはどういうことをする場所なのか?彼女は疑問に思った。

ハンシ−ライブラリーを探索していると、電子レンジの上に紙切れがあることに気づく。

その紙は単純なデザインをしたもので、誰か宛の手紙の下書きのようだった。

しかし、名前のところや、部分的に何故かぼやけていて、所々読めない。黒いボールペンの字は少し乱れていて、書いていた人は動揺していたのだと見て感じる。



『※※へ、
元気ですか??
突然いなくなちゃって、すごく驚いたよ。他のみんなもすごく驚いてた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※。
ここに帰ってきた時、※※がいなくて、悲しくて泣いちゃったよ。。
みんなは家族の事情としか言われてないけれど、もし良ければ話聞きたいいなーって思ってます。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※。
※※と今度いつ会えるかわからないけど、また会えるといいな。
じゃあ、元気でね。
※※より。』



「。。。誰かここにいたのかな?でもこの手紙。。これはどこか覚えてるような気がする。。」

ヒカリはふとあることを思いついた。

背中に背負っていたリュックを開けると、中からノートブックを出した。この中に書いてある字と比べて、筆跡が同じがどうか確認しよう、という考えだった。最初に開いたページには数学の方式などが書いてある。

「やっぱり。。筆跡が同じだ。。これ、私が書いた下書き。。」

字のはね癖や、細かい部分が自分の筆跡だと言うことを表す。


しばらくその手紙を見つめていると、あっと片手を口にかざす。

「私、大切な人を探してたんだ。」

その手紙はきっとそのことだと彼女は悟った。

手紙を大切に化粧ポーチにしまう。


名前と、自分の目的だけはわかったヒカリは、忘れないようにノートブックに記録した。


『自分の名前:アラタ ヒカリ
目的:人探し』


そう書いて、ノートをリュックにしまうと、彼女は一旦部屋から出ることにした。

重い木の扉を開けると、廊下にでて、9号室に戻ろうとしたちょうどその時、、すぐ隣の10号室の扉が開いた。

「わっっ。。?!」

ヒカリはあまりに予想外な展開に思わず声を上げた。

10号室から出てきた人物に問いかける、

「あ、あなたは。。。?」


ーーー−−