「お船に乗りたいです」
「船なんかあったんだここ、そっか、うん、分かった。そうしよう、それに乗ろう」
「はい」
やべえ。
なんだこの感じ。
この無垢な感じ。周りの男どもの目も気になるが、加穂留と俺は既に一心同体みたいなもんだ。
こんな子と最期まで一緒にいたら幸せだろう。気持ちよくいけるはずだ。
「早くっ。船、出ますよ」
「お、おう。俺も船は好きだからけっこう楽しみ」
「船、好きなんですね」
「のんびりしてるし、楽でいいと思うから」
「確かにそうですね」
「だよな」
この感じ、この逆らわない感じがいい。
居心地がいい。いつもの俺じゃない俺で話ができるこの楽しさ。悪くない。
「ほんと、もう暑いですね」
「そろそろ夏だしね。暑くなるね(ま、俺らがその暑さを感じることは永遠にないと思うけど)」
「加穂留、ビーチパラソルの下で本を読んだりぼーっとしたり、海の中でパシャパシャするのとか好きです。ユウダイサマは何が好きですか?」