「おい」
頭上から不機嫌な声が聞こえて顔を上げた。
そこには明らかに怒っているリュウの顔。
その腕の中で、美久が呑気に「ママー」なんて言っていた。
「何なんだよ、さっきのは」
さっきの?
「平岡の奴と、やけに親密だったな」
「そんなんじゃないよ」
元はと言えば、こうなったのは全部リュウのせいじゃん。
リュウがキスマークを付けて帰って来なきゃ、あたしがいちいち考え込むこともなくて。
美久のことも、ちゃんと見ておくことが出来た。
ホッとして力が抜けることもなかったし、平岡さんに支えてもらうこともなかった。
リュウが悪いんじゃん。
それなのに、なんで怒ってんの?