誘拐された……とか?
今、子どもを狙った事件って多いし。
ウソ。
やだ。
ありえないよ。
半泣きになりながら美久を探し回った。
だけど、やっぱりどこにも見当たらない。
やっぱり……誘拐された、とか。
「どうかしましたか?」
女性陣から解放された平岡さんがあたしに気付いて走り寄って来た。
血相を変えてるあたしを見て、不思議そうに目を丸める。
「み、美久が迷子に……!」
「美久ちゃんなら、社長と一緒っすよ」
「えっ?」
パッと顔を上げると、そこには笑顔で美久を抱くリュウがいた。
「社長のあんな顔、今まで見たことないっす。よっぽど愛してるんでしょうね」
「よ、良かった……」
誘拐されてなくて……本当に良かった。
ホッとしたら足の力が抜けてしまって。
ヒールを履いていたせいもあって、足元がふらふらした。
「だ、大丈夫っすか?」
「あ……はい!す、すみません」
平岡さんが支えてくれて、何とか転けずに済んだ。