リュウは走っている美久に気付くと、途端に頬を緩めて優しい顔になった。
そして話していた人に断りを入れて屈むと、美久を軽々と抱き上げた。
話している声までは聞こえないけど、さっきまでのクールな表情は消えてとても柔らかく笑っている。
どうやら、相手の人に美久を紹介しているみたい。
「あの……もしかして、辰巳社長の奥様ですか?」
目の前の女性が、恐る恐る声をかけて来た。
なんだかショックを受けているような顔をしているのは、あたしの気のせいだよね?
「あ、はいっ!主人がいつもお世話になっております」
「いえ……!私、社長秘書の大久保と申します。ご挨拶が遅くなって申し訳ございません」
社長秘書……。
この美人な女性が。
なんだかショックだった。
リュウは、毎日この人と一緒にいるんだ。