「綺麗だけど、よそ見してたら人にぶつかるよー!前向いて」
上を向きながら歩いていた美久は、あたしの声なんて耳に入っていない様子。
ロビーの中は、タキシードやドレスを着たたくさんの人が静かに談笑していた。
そんな中で、美久が人にぶつかりそうになった。
だけど、相手の人が避けてくれたから何とか回避することが出来た。
「もー、前見て歩かないからだよ!すみませんでした」
相手の女性に頭を下げる。
その人は細身のラインが綺麗なパープルのドレスを着ていた。
足も細くて、ヒールが良く似合っている。
「いえいえ。こちらこそ良く見てなくて、すみません」
顔を上げた瞬間、一番に目に付いたのは真っ赤なルージュが塗られた唇。
キツそうだけど、とても綺麗で芯が強そうな美人な人だった。
フルーツみたいな甘い匂いも漂って来て、胸の奥が張り裂けそうになる。
ーーズキン
間違いない。
リュウのワイシャツのキスマークの人だ。