完全に場違いなあたしは、外観を見た瞬間から帰りたくなった。
「ママー!早く行こう」
普段と違う雰囲気に、美久はテンションが上がってはしゃいでいる。
李久も手足をバタつかせて楽しそう。
怖じ気付いてるのは、あたしだけ?
とりあえず李久をベビーカーに乗せて、美久の手を引いて歩いた。
ロビーの自動ドアをくぐると、タキシードを着た優しそうなお兄さんが会釈してくれる。
「こんばんは。お待ちしておりました」
「ど、どうも……」
わー。
なんだか緊張するよ。
履き慣れないヒールも歩きにくいし。
「ママー!キラキラしてて綺麗だね」
天井にあるシャンデリアを指差しながら美久が笑った。