「……そして、石森さん。私はあなたに幸せを分けたいと思っているわ」

「私に?」

杏奈は震える指で、自分を指差す。
光子が、こくりとうなずいた。

「ええ、石森さんのことが1番最初に思い浮かんだの。私と同じで、どのグループにも入っていなくて、中沢さんたちから、嫌がらせをされていたから、勝手に仲間意識のような物を感じていたのよ。
私ね、本当は石森さんと仲良くなりたいって思っていたの。
でも以前の私なんかとは、仲良くなりたくなんかなかったでしょうね。今ならよくわかるわ」

光子は、自虐的に笑っていた。

もっと光子が、身綺麗だったら、仲良くできるのに、と考えていた杏奈はなんだか気まずかった。


「まあ、そのことは置いておきましょう。早速マリア様をここへ呼びましょう」

まだ心の準備ができていない杏奈のことは、お構いなしで、光子がポケットから取り出した白い紙を机に広げる。

紙は机の半分ほどの大きさで、中央には天使の羽が対になり、描かれている。

さらに左には、平仮名の50音。右にはカタカナの50音が書かれていた。
羽の下には、はい・いいえ。
そして0〜9の数字があった。
どの文字もパソコンで、印字されたようにキレイな文字だ。