話をきいた杏奈は目を見開いた。

「トイレでそんなことがあったなんて……でも一体なんなの? そのマリアっていうのは……」

「マリア様よ!」

光子が、眉間にしわを寄せて、訂正してくる。

「ご、ごめん。マリア様は一体なんなの?」

杏奈はは、慌てて、言い直す。

「マリア様はね、姿は見えないけど、全知全能の神様なの」

光子は、重ね合わせた手の甲に、ほほをあて、夢見る乙女のように言う。

「私はあの日、この教室で願いごとをしたの。昔からデブだの、ブスだの、不潔だの散々バカにされて悔しい。だから、キレイになりたい! って。
そしたら、翌朝にはこの姿になっていたの。顔を洗うために鏡を見た時は、知らない人がいるって自分でびっくりしたもの。両親なんて、びっくりしすぎて声も出ていなかったわ」

光子は、うふふ、と思い出し笑いをしている。

それをきいた杏奈は、ごくりとのどを鳴らした。
にわかには信じがたい話だが、確かにそれなら、光子の劇的な変貌は説明がつく。

「じゃあ、急に痩せてキレイになったのはマリア様が願いを叶えてくれたからなの?」