「あっ、あなたは一体誰なんですか?」

光子は、カラカラに渇いたのどから、声を絞り出した。

『わたくしはマリア。その紙に祈りなさい。そのための知識はすでに与えてあります。願えば、わたくしがなんでも叶えて差し上げましょう』

スゥーッと冷気が、一気に引いていくのがわかった。

まだ心臓がドキドキしている。
白昼夢かと思ったが、手のひらの紙が現実であることを物語っていた。

「山根、どうしたんだ⁉︎」

春山の声で、光子は我に返り、慌ててトイレから出た。
先ほどの紙を後ろ手に隠して。

今の出来事を話せば、騒ぎになることは目に見えていたので、いじめた詩織たちがついたであろうウソに同調しておいた。

詩織たちは、おどろいた顔をしていたが、光子にはもうどうでもいいことだった。

本当に、こんな紙切れで、なんでも願いごとが叶うのだろうか。
そのことで頭の中はいっぱいだったからだ。

家に帰るまで、待ちきれず、光子は誰もいない教室で、紙を広げて、願いごとをすることにした……。