放課後。

光子に言われた通り、杏奈は自分の席で、人がいなくなるのを待つことにした。

教室の後ろで、愛子たちのグループが、お菓子を食べながら、楽しそうにおしゃべりをしている。

教室中を見回したが、光子の姿は見当たらない。

「あ〜っ、光子の奴、ちょっと痩せたからって調子に乗って、マジでムカつく。一花ちゃん、あいつ痛い目見せてやろーよ」

詩織が嬉々として、一花に提案する。
しかし、一花は、そんな話には興味なさそうに携帯電話を扱いながら、教室から出て行った。

「あ、一花ちゃん待ってよ」と詩織が、慌てて追いかけていく。

夕日が校舎を染めだしたころ、ようやく愛子たちのグループが帰り支度を始めた。

「あれ、石森さんまだ帰らないの？」

通学カバンを取りに来た愛子が、きいてくる。

「うん、ちょっと用事があって」

杏奈は、曖昧にそう答えておいた。

「ふーん。じゃあね」

愛子は手をふり、グループの女子たちと教室を出て行った。
それを見送った杏奈は、教室の壁時計に視線をやる。