寒い寒い、と手をこすり合わせる高瀬。 その指先は赤くなっている。 仮にも楽器を演奏する手なんだから、少しは大切にした方がいいんじゃないの。 私は内心そう思いながらも、口には出さない。 言ったって、高瀬は特に気にもとめないだろうから。 まぁ、高瀬の中学時代は吹奏楽とは無縁のバスケ部だったし。 そういう細かいことはあまり気にしないのかもしれない。 そんな高瀬がなぜ高校でいきなり吹奏楽部に入部したのかは、 いまだ不明だ。