私は、入院1週間を余儀無くされていた。

だけど、腰に刺さったナイフもそこまで深くなかったということで命には別上はなかったらしい。


「空実さんっ!山田だよ〜!」

いきなり戸があいた。

私は、あの時の部屋から個室に移された。

情緒不安定なみかが同じ病院にいるということから安全面に二人は離した方ががいいということ。
私とみかは、知り合いだったことから、みかは何も分からず刺したのではなく、故意に刺した可能性があるということで簡単に、みかと鉢合わせてはいけないという判断だったからだ。


「山田さん〜
ノックくらいしてくださいよー!」

山田さんは、相変わらずあの日から毎日来てくれた。

どうやら、みかの事件の担当の刑事の部下らしく、毎日この病院に来ては色々事情聴取をしたり、みかとわたしの病室の前に立って警護をしたりしているらしい。
しかし、なかなか、みかは精神的に回復せず、事件は困難を極めていると聞いた。
それでも、忙しい中、実家にいる親が毎日は来れない分、相手をしてくれる。


「ごめんなー、まぁ、シューアイス買ってきたから我慢しなさいっ!」

ぽんっと
頭を軽く叩かれた。

相変わらずピシッと決めたスーツ姿で、冷凍庫にシューアイスを詰める彼の後ろ姿をベットから眺めていた。


「...食べ物で釣られるほど子供じゃないです。」

「ふ〜んっ、じゃあいらないのかな〜」

なんて言いながらちゃっかり冷凍庫にシューアイスを詰め終わっている。

「...山田さんと話していられるのもう残り2日ですねー」

窓の外に見える大きな山を見上げながらつぶやいた。

「なになに?寂しいのー?」

刑事のくせに、タメ口聞いてるし、気さくに話しかけてくるし。

「寂しくないですよー」


って、それは嘘で。本当はすごく寂しい。

「俺は寂しいよ?」

山田さんは、山の上に輝く太陽よりも爽やかな笑顔をちらつかせた。


ずるい。
山田さんは、ずるい。


「そうですか...」


なんで、私は、そんなに素直に言えないんだろう。


まだ、山田さんと話していたいし、
一緒にいたい。


ドクンと胸が踊る。

懐かしいこの気持ち。


恋という淡い心。


「空実さん、聞きたいことがあるんだ。」

私の顔を覗き込む彼の顔。


ドキドキと鼓動が波打った。