「智治...ちょっといいか?」
空美の様子を伺おうと病室まで足を進まていた時、
あの時、無事に命をとり止めた上司である先輩が話しかけてきた。
俺は、何か嫌な気持ちを抱えながら立ち止まる。
いま、このときも、
斗真が空美を奪ってこないかと手に汗を握る思いだ
「お前...顔色が悪いぞ」
そういう先輩も病み上がりだからか青白い顔をしている。
自分の顔を見たほうがいいのではそう思って可笑しくなった。
まぁ、そんなことを
考えながら
「大丈夫です。先輩、お怪我の方は?」
心配そうな表情を浮かべて
俺は逆に先輩に問いかけた
お願いだから、早く行かせてくれ
というか行かせろ
「なんてことないさ.....それより空実さんの"あれ"は確かだと結果が出た。くれぐれも注意してな。」
そう言うと、先輩は俺の背中を軽く叩いて
被疑者少年少女事件と名付けられた今回の大きな事件の調査報告に足を走らせた。
先輩が口にした
"あれ"
それは、俺と空実の関係を崩したあれだ。
あれがなきゃ
斗真なんてただの弱っちいな男の子だっていうのに...。
そうだ...あいつが現れなかったら
斗真はこんなことなんてしない
そう...
「そ...らみ?」
斗真が純粋のままなら
恋と言う名の荒れ模様がなければ
あいつ..."トウマ"は
空実を連れ去るようなことはしない
ヤンデレに溺れたトウマに
俺は負け続けてばかりだ。