斗真のお母さんが待つ住宅街に車を止める。




「.....斗真くん。着いたよ。」




昔の話を
息も忘れて涙を大量にこぼしながら
話し終えた後、彼はぐったりと眠りについていた。




乾いた涙の跡が痛々しい。




「.........車の鍵開けておくから、起きたらおいで。」




スヤスヤと寝息を立てる彼にそっとつぶやいて、俺は車を降りた。




彼の深い過去は、きっと俺が知るよりもずっと昔のことのように感じるほど辛く悲しくて、


恋は、人を変えてしまうんだと思った。





「.....ハ。」





今夜で降った雨がいつの間にか雪に変わって、地面を白くさせ始めていた。



深夜の寒い夜の中ぼうっと明かりが灯る大きな家。




「.....嘘..だろ。」




窓から漏れるオレンジの明かり。




ザクザクと、溶けかけの曖昧な雪がブーツを汚して俺の足を進みにくくする。




「......あ、あ...」



走る足が冷たくなって血液が凍っているみたいに。





......窓からの光は
オレンジのだと言ったけれど






「......んだよ。これ」





赤い、何かが、

ステンドグラスのようにべっとりと付いていて。




それは、俺からじゃ触れられないのだから、大きな温もりを築くはずの家の中。






そうだ。

これは、悪い夢なんだと、




ゆっくりと正面玄関前へと急いだ。



途中で滑りかけたのもどうてもいい。


コートがずぶ濡れになっても





「......俺は、恩返ししなきゃ...









ブーブー






......ハ?」






車のエンジンの音





俺が、玄関のドアを開け

真っ赤に染まった玄関を目にした時と同じタイミングと同じだ。






「......くそおおおおおおおお」






なんでだ、まただよ。