どれくらい歩いただろうか。


交番のおじいさんが見えて私は
雨の中、彼に近づいた。




「すいません...迷子でっ」


「あら...君...どっかで....」


何かを感づいたようにまじまじと私を見るおじいさんをよそに、私は交番に駆け込んだ


「ちょっと...君!?」


「ごめんなさい!私、俳優のみぞらって言います!あの...あんまり見られれたら困るので中で話してもいいですか?」



みぞらとは
空美の並び替え。


俳優とでも言っておけば
見たことあるに違いないし
おじいさんくらいの年齢ならテレビで見るけど名前は知らない程度の女優さんをたくさんみてるはずだし。


「あ!ああ!あのcmの!そうだよねーパパラッチとか怖いもんねー
ちょっとまってねータオル出すからね〜」



まんまとはめられたおじいさんは交番の奥の方へタオルを取りに消えた。


私は、急いで机を漁る。


来ないうちに

見つからないうちに


ちくしょう...智治めっ
もう私の情報バラしやがって。


机の上の
私の顔写真と情報の書かれた紙をぐしゃぐしゃに握りつぶしてポケットに入れる。


チッっと舌打ちをしたタイミングにおじいさんがタオルを抱えて戻ってきた。



「あ!お嬢ちゃん、そこじゃなくてここのソファ座りなー」

「あ!すいません。何から何まで...」


にこりと笑うと、ソファに移動する。



タオルを渡されると綺麗に体を拭いて私は尋ねた




「あの...実は撮影中に喉が渇いたんで飲み物買いに行ったら雨が降るしどこかわからなくなってしまって...」



「それはいけないね〜どこで撮影だったの?」



その言葉にわたしはにやりと
口を動かした。




「刑事ドラマだったんですけど、たくさんパトカーが来て...撮影用のじゃないんです!なんか慌ただしくなっていました。確か高級住宅街で...」




「...たくさんのパトカー?」



「はい...。」




おじいさんは
そうかそうかと
頷きを繰り返した。



きっとどこかわかっているはずだ。


そこが私が行きたい場所。




「早く!早く行かないときっと心配してるわ...携帯も向こうだし...私...私どうしよう。」


「ここから連絡することできないかね?」


ほらっと
交番の電話を渡されるが私は大きく首を横に降る。



「電話帳も向こうで...お家も引っ越したばかりで覚えてないし、家族ともいつもラオンの通話で話してるし...」



ボロボロと涙を流して
しゃっくりをあげてみる。



「そうか...んー仕方がないねぇ...女優さんの行方不明ならこりゃ、大変になるしねぇ
しょうがない。パトカーがたくさん集まるような事件があったんだよ。そこに行くけど、これは内密にね?」



ウインクをしたおじいさんに
威勢良く
はい!っと返事を返した私は、おじいさんとともにパトカーに乗せてもらった。



「一応、女優さんだし、可愛いからねー誘拐されちゃあ大変だからね。」



そういうとおじいさんは車を走らせる。




ちょろい

ちょろすぎる



なんてうまく行くんだ。



私はポケットの中のぐしゃぐしゃの資料を取り出す。


後部座席だからおじいさんにはみえていない。




一応気分が悪いと横になって鏡に映らない死角で紙を広げた。





『逃亡者 容疑者 ◯◯空実』


高校の卒業写真が隣に貼られていた。










『二重人格の可能性 有』