「いたぞっ!!」



その言葉とともに

空実は俺とはなれた

いや、離された。




「ぇ...」






呆然とした顔で俺を見る彼女。



小さく俺は笑う。


ごめんな、ごめんと

心で空実にかたりかける。



「.....な、んで」



智治さんが刑事を引き連れて羽交い締めにしだした。




涙がひっきりなしに俺のほおを伝い始める。





「...ごめ......ん」


身動きが取れない。





俺はそのまま...






「斗真くん、ありがとうね。ご協力」




空実を見捨てなければいけない。






「な、なんで...え、なに。なんで智治がいるの!?」





泣き叫びながら、彼女は自分の体を抑える智治さんに問いかける。







俺はどうしたらいい?




泣いている。

俺も空実も。



悲鳴をあげて。



はやく

いま



「斗真っやっだ。ヤダヤダ離してぇっ!!」



おれはつったていることしか


できない。





「うっぐ...」






喉の奥が燃えるように痛い。

唇が震えて、涙がより多く


多く...


流れて...



吐きそうだ。




「いやあああっ!!」



「智治っ!そこ抑えろ!!」


「すいませんっ!」



暴れまわる彼女を乱暴に抑える彼。





あぁ、




「.......くそ。」





空実の泣き叫ぶ顔が



もう見てられない。


狂ったようだ。



「斗真っ!ねぇ、斗真ってばああいや!」




「くそっ」


必死に涙でぐしゃぐしゃになる顔を隠しても、


「やだってば!斗真がっ斗真!!!ダメ!もうっ」



必死に血が出るほど唇を噛み締めても



「くそっくそくそ...っ!!!」



どうしても、手の隙間から見える空実から、目が離れない。



「...もう、離れないって、言ってよ。わたしっずっと...忘れようとしたっのにっ」



そう言いながら抵抗のする力が緩んだ彼女。



涙が夕日に照らされて




綺麗......だ。




「くそ....くそだ」



こんなに好きなのに



彼女は力尽きてあいつの肩に寄りかかっているなんて




あぁ、




「刑事さん」




俺はやみくもに智治さんの腕を取る。





「離れろ。」




離れるんだ。

空実から。



触るな。