智治side



ピーーーーーー



社内に響くサイレン音



「行くぞ。智治。」


「...はい」


日が沈み始める夕暮れ時


スーツを整え、ビルの下に停めてある車へと急ぐ。


「先輩っ!」

車に急ぐと、運転席には先輩が今か今かと待っていた。

急いで助手席に飛び乗る。


「いよいよだな。智治」

「.......はい。」

「これで全て解決だ」

「何か動きが?」

「彼が動いた」

ついにか...シートベルトを締める手に力が入る。

「と、なると....」

「あぁ、


今がチャンスだ」




やっとこの日が、






っと...タイミングが悪い


信号が黄色から赤になる。


チッと舌打ちをする先輩。
あぁ、きっと怖そうな顔をしているのだと横をちらりとみれば

「...救急車も呼んでるんですか?」

隣の車線に止まっていた。

なるほど。


なにやらサイレン音が耳に響くと思えば。


「あぁ、精神依存が見られるかもだからな。」


「なんですかそれ?」

精神依存ということは薬物か?

いや...そんなーーー

「違うさ、心さ。愛する力が強いかね。だから事件が起きる。」



...なんだそれ。


ふはははっと大笑いしながら車を走らせる先輩。


「それって、やばいんですか?」

「やばいもなにも、愛で人を殺せちゃうんだぜっ」


車に乗り込んだ時の緊張感とは打って変わったように笑いが響く車内。


「......そんな、こわい」


「それをやってのけちゃうんだよ。犯人は」


いや、そうとは決まってないけどな
っと、一瞬は真剣な顔をした先輩だが
また、大きな口を開けて笑い出した。




...聞いたことがある。


人は愛するあまりその人のためになんでもしてしまう。
そして、その人を守るのならなんだってする。
自覚はないのだ。
悪いことでも守りたい人のためなら


愛する人のため


なら、人殺しでも自殺でもなんでもすると。




確かそれを、



「......ヤンデレ」


「っお?なんか言ったか智治?」


「ぁ...いえ。」




聞いたことある。その話を彼女から。





そして、



「着いたぞ」




その彼女のマンション付近で構えろとの指令



「お前がいけ」



「いえっ!先輩!それは!」



鼓動が激しくなる。



「お前が全てしてきた成果だ。


お前が仕留めろ」







ヤンデレ。

それは、どんな人でも
陥るのかもしれない。




たとえ、たとえ、


刑事であるわたし...でも......









「いたぞっ」