「わああああ、ごめん!いや、ガチでごめん、」

素早く私の体からどいた彼は、珍しくかなり慌てて私に謝った。

「あっ、あっ、えっと...いいよ。だいじょうぶ!」

てんぱって頭が追いつかない。
変な手さぶりをしてなんとか返事を返した。

ドキドキドキドキ

心臓がおわりそう。

「空実〜大丈夫?」

みかが優しく駆け寄ってきた。

「う、うん。」

ぎこちなく笑顔を作る。

「ごめんな!空実...」

「いいって!こんなことたくさんしてきたじゃん〜」

私と彼は幼馴染だ。

家が隣で、って言っても彼の家は大きいから彼の敷地の端に建てられた家がわたしんちで。

私の父は、彼のイケメン父の会社で働いている。

だから、小さい頃は家族づきあいも良く、彼の家のお庭でたくさん遊んでたくさん喧嘩したこともあった。

殴り合いとか倒し合いとか。

今思うと子供じみてた。
だけど、彼がそんな事をするのは私だけで私はずっと彼の特別だと思ってきたんだ。

なんて、楽しかったなぁなんてことをおもっていると口元が緩み出す。
必死に唇を歯で噛み抑えた。


「........んだよ。」

「ぇ?」

しまった。
昔のことに浸りすぎて彼の話、聞いてなかった。

「空実はもう...」

「え?なに?斗真聞こえない」

少し近づく。
肩と肩は当たる至近距離。

周りの男子らがヒューヒューなんてからかってくるから、みかが一発喝をいれて止めてくれた。

「...ぉい」

「だからなに?」

聞いても聞こえない。
もう少し近づいてみようと試みると腕同士があった。

ビクッと彼の体が反応した。

っと同時に

「.......空実!やめろよっ!」

彼の怒鳴り声が響いた。

「ぇ?ちょっ!まっ」

彼は、ものの一秒で立ち上がって走って教室を出て行った。

唖然とする教室。

「........あいつ、はずかしがってんじゃねぇーの?な!!」

なんて、男子の声が聞こえる。

こんな時に、からかうひねくれただんしではない。


なら...

逃げられた私への同情の言葉か?

....それとも、彼の好きな人は私で...

なんて、ふわふわする変な気持ちを残していたらダメなんだ。

「ふぅ。」

わたしは、小さく深呼吸すると
静かに立ち上がり

「みかっ、朝の朝礼は、体調悪くなったから出れませんって言っといて。」

っと言い残し教室を出た。


......彼はどこにいるなんて、

すぐわかる。幼なじみだから。