智治side


「ねぇ、私のこと好き?」



空実が聞いて来た。


そう、言われた時
俺は、苦痛でしかなかった。

おそらく、それも顔に出てしまい彼女を心から傷つけただろう。


「...いいから、空実はそれ食べな?」


さきほど運ばれてきたスパゲッティーを空実に進める。


「...う......ん」



今にも涙が溢れそうな目で俺を見て、彼女はスパゲッティに目をそらした。



俺は間違っていない。



切なそうに麺をくるくると巻く彼女の手が寂しそうに俺に問いかけてくるような気がした。


『手つなごうよ』


彼女は前に、そう何回も言ったことがあった。


おねだりだ。



俺のような大人からしたら、素直な彼女が心から可愛らしいと思った。


無邪気な彼女の笑顔をもっともっと見ていたいな。



と。




『ごめんね、今日は仕事中に手を怪我してしまって。』



なんて、苦い言い分を揃えたセリフに彼女は不信感を覚えなかっただろうか。


いや、覚えたに違いない。




悔しかった。

俺はどうしてこんなに馬鹿なんだ

彼女を傷つけることしか

俺には未来がないというのに。


俺は、彼女のそばに居続けなければいけないんだ。



『そうなんだ...怪我大丈夫?』



上目遣いで、俺の嘘の本意を知るはずもない彼女が心配そうに俺の服の袖を引っ張った。



これ以上やめてくれと。


俺に、俺は

俺の


彼女は空実だろ?


なのに、


俺に、幸せにさせる義務はない


俺は、彼女の心を掴んでしまうような大人ではない。



『ありがと。大丈夫だよ。
さ、行こうか?スチバ?』


『うんっ』



無邪気な笑顔を見て

俺は


思う。




この子が欲しいと。





だけど、それは



【城田斗真】








役目だろ?