「ただいまー」


智治と別れて、家に帰ると、やはり誰もいなくて
しんみりと寂しい。


隣に智治がいてくれたら。

さっきあったばかりなのに、今すぐ体に飛び込みたい。
ギュってしたい。
ギュってしてもらいたい。



彼は、

智治は、


たくさんデートをしてくれるし

毎回楽しそうにしてくれてる。

もちろん、私を楽しませてくれたり、
私の行ったことは覚えていてくれたり

最高の彼氏だ。


だけど、


彼は、


『手を出さない』

『好きとは言わない』


その二つに

縛られてるように見えてしまう





さっきだって、帰り際にいい雰囲気になったはずなのに、
バックは夜景。
素敵なテラスでよるごはん食べて....

だけど彼は何もしなかった。

手も、


『好き』

の言葉さえも

聞いてない。


私は、好きなのに。
好きって
何回も言ったのに。


彼は決まって、
少し顔をゆがませた後、
小さく苦笑いで返してくるんだ。


まるで、好きとか言わないでくれって言われてるみたいに。


ああ、私ってばすごく智治のこと見てるなぁ。

見過ぎ?

好きだからいいじゃん。



なんだ...すごい私、智治に依存している。



彼氏なんだから.....


そう、彼氏...。




『今日はね、漫画を久しぶりに見ちゃった。』

『うん』

『それでね、主人公がすごくかっこ良くてキュンキュンしたの。智治みたいに!』


『......っ』


そうだよ。

智治は、いつもそうやって


なんで?、


辛い顔をするの?


『...どうせ、お相手の子も空実みたいに可愛いんだよ』


あぁ


なんでよ。


お願いだからやめてよ


そんなにわかるような


嘘を


どうして、


付くの?





心からそんなの言ってないでしょ?






好きだよ。
私は、こんなにも思ってるのに。





.........智治は、こんなにも私を好きになってくれてる?



ふと、誰もいない静かな空間の中で
思いついてしまう




そんな、考えても霧がないことを...。









もしかしたら、私がしつこいからイヤイヤ付き合ったとか?

そんな、しつこいことなんてした覚えはない...けど、不安になるもの。




智治も会いたいって思ってくれてる?

今、あなたの頭に私の顔が浮かんでる?

ううん...

名前だけでも頭の片隅でも考えてくれてるかな。









どうしてだろう


好きどうしで付き合ったはずなのに

いや、
付き合うってそういうことだよね?






.....不安になる必要なんてないよ





そう、心に押し込んで
私は眠りについた。










........誰かに見られてるとは知らずに。