うだうだ過ごしているうちに、時計が八時四十分を告げる。
 

がらりと入ってきたのは、我がクラス担任芝やんだ。
 
でかい体躯に焼けた肌。我が高校でも花形の野球部の顧問なだけあって、夏はだいぶ活躍したのだろう。
 

クラスを見渡すと、芝やんは教卓に手をついた。


それを合図に、


「起立、礼」

「おはよーございまーす」

「着席」


号令がかかり、クラスメートたちは若干だるそうにしながらも、なつかしき習慣を実行する。久々だったが、やはり身についていたようだ。


「みんな揃ってるな」
 

芝やんの言葉にちらと周囲を見るが、席は大体埋まっている。
 

埋まっていないのは、なんか私の隣の席なわけだが。
 

その席は一学期の途中で留学してしまった、なんでこの高校にいるのかわからないくらいの才女・川上さんの席だ。
七月も始まってすぐ、彼女は遠いEUのどこかしらに旅立ってしまった。
なんと一年は向こうらしい。
 

同じ年齢の高校生とは思えない、素晴らしい行動力と実行力だと思う。