机に上半身を預けながら、そういえば結ちゃんが家に来てからそろそろ十年か、と思う。
 

結ちゃんは幼馴染で、かれこれ十年来の付き合いなわけだが、両親が海外に転勤してからうちで預かっている。なんでも両親とも早くに身内を失くして天涯孤独らしく、頼りになるのは隣の家――私の家だけだったという話らしい。
 

それが原因かは知らないけど、結ちゃんは妙に他人行儀なところがあるというか。昔から誰に対しても敬語しか使わないし、ため口をきいているところなんて見たことない。大人とも対等に渡り合って、なんだかかっこいいなと思わされる。
 

外見だってそうだ。
 

白い肌に切れ長の目。鼻筋もすっと通っていて、クールビューティーと言われる部類の顔立ちだ。身長も平均より高めで百七十近いし、体は細身。髪の毛は肩より少し長く、それをいつも後ろで一つにまとめているが、夏場になってたまにアップにしているところを見たときは、なんだかマッチしすぎているというか似合いすぎていて、無駄にときめいてしまった。しかも昔から剣道を習っていて、部活動には所属していないが二段はもっているらしい。
 

おかげでいつも結ちゃんといる私は、結ちゃんの隣にいるのがあーだーこーだーだの、中を取り次いでくれとか、告白するので呼び出してくれ等々。なんだろう、みんな私を何だと思っている、私は結ちゃんのマネージャーと違うからっ。
 

ちなみにそんな結ちゃんの心をとらえた勝者は今のところ存在しない。
 
一部じゃ私にゾッコンなんて噂があるけど、絶対ないと思う。
大体私と一緒にいるけど、多分友達が他にいないからじゃないかな。


…今のはひどかった、うん。