校内に入ると、人の密度がどっとあがる感じがした。
 

結ちゃんと連れだって歩きながら、これからまた勉学の日々がくるのかと嘆息する。
 

だらだらと過ごした夏休みのひと時がもう恋しい。昨日までに帰りたい。
 

そう思いつつも、歩みが遅くなる私を結ちゃんが引っ張ってくれるので、それに合わせて教室にたどり着く。



「はよー」

「うーっす」

「おはよ、しいちゃん」


教室に入り挨拶しながら席に着く。
 
何の因果か結ちゃんと私は席が前後なので、一緒に教室の奥まった窓際まで移動し席に座る。
 

途端に何となく懐かしさがこみ上げてきた。
 

落ち着いてしまって、ああどうしよう。友達に久々に会えるのは嬉しいが、嬉しくない日々の始まりがもう逃げようもなくそこにあるんだよ…。
 

机に突っ伏すと、人がすぐ近くに寄ってくるのがわかった。


「何してるんですか、椎名。もう始業式ですよ」

「わかってるよー。いいじゃん、最後の無駄な足掻き」

「そういうの、醜いですよ」

「うっさいな」
 

ふてくされて、顔を窓側に向ける。
 
青い空と強い太陽光線が降り注ぐ。
田んぼの真ん中なんて素敵な立地のおかげで遮るものが近場にない視界は、とても美しい。だけど全然嬉しくない。
 

結ちゃんがため息をついて離れていくのがわかる。
 

あーあ、呆れられちゃった。
 

そう思いつつも、無駄な足掻きはやめられない。